ほしぞら1/2

ぽつぽつ書いている二次創作小説たち。ジャンルごった煮。Twitter@bbb_kzs

【嶺藍】飛ぶ、跳ぶ、とぶ

煙草を吸う寿嶺二はズルイと思います。

普段はほとんど吸わないけど考え事する時とかだけとか美味しい。

 

2013.10.17.

 

 

「こんなところにいたの、レイジ。」


「ねえ、アイアイ。羽みたいに、どこまでも、飛んで行けたらいいのにねえ。
…その先にはなにがあるのかなあ。」
独り言のように、哀しい歌を歌うように、宙を見つめて彼は呟いていた。
ボクに話しかけているはずなのに、ボクはまるでいないかのように。
彼の手にある煙の先からは灰が零れ落ち、空を舞いながら遥か地上へ落ちていく。

レイジのようだ。
唐突にそう思った。
そこにいるのにふわふわとボクの腕からすり抜け、落ちていく。
目の前でベランダに寄りかかるレイジが、いま消えてもボクは驚かないだろう。
そんな確信さえもった。

「ねえ、アイアイ。」
今度はボクの方を振り返った。
レイジは微笑んでいた。
まるで全てを理解したかのように
まるで全てを諦めたかのように
「いまならボクも飛べる気がするんだ。」
そう言ってレイジは笑みを深めた。

ひゅっ


レイジが風をきる音だったのか
ボクの喉の音だったのか
ただ秋の風の音だったのか

言葉の通りレイジは飛んだ。

ベランダから下を覗き込むと人だかりと赤い水たまり。
レイジは飛んだ、跳んだ、とんだ。
彼が願った通りに。

飛ぶ、跳ぶ、とぶ
(ねえ、飛んだ先には何が見えたのか教えてよ、レイジ。)