ほしぞら1/2

ぽつぽつ書いている二次創作小説たち。ジャンルごった煮。Twitter@bbb_kzs

【翔藍】小さな花とぼくのきもち

014年1月10日。ツイプリにて起きた翔藍ちゃんお茶事件。

(フォロワーさんと勝手に命名)

に散々萌えまして書きました。

かわいいかわいいふたりが伝わったか謎ですが、補填してください・・・。かわいさ∞

(勝手に)翔藍師匠のねしさんに捧げます。

 

2014.01.17.

 

 

「…おう、藍。」
事務所のスタジオで次のミニライブでのダンス練習を兼ねたリハを終え、
ふと一息つこうとスタジオの外に出ると、目の前の廊下を早足でこっちに向かってくる見知った姿。
鮮やかな海のような色をした髪をもつ事務所の先輩である、藍。


ガサッ
「…は?」
目の前に立ったと思いきや急に押しつけられた薄いクリーム色の紙袋。
突然のことに頭が追いつかない。
「…っ、たまたま持ってただけだから。別にショウにあげる、とか、ではなく。」
それだけ言ってそのまま元来た道を来た時と同じように早足で去って行った。
若干歯切れの悪い話し方はいつも何に対してもきっぱり物を言う藍にしては珍しく、
そして、
「そんな言い方して逃げるとか…俺のためにわざわざプレゼントしにきた、って言ってるようなもんだぞ。」
去り際の若干ヒート気味の藍の顔を思い浮かべ、思わず顔に熱が集まる。
紙袋は思ったより大きく、中にはたくさん包装された…
「…お茶っ葉?…花もついてるし」
一輪だけ生花まで刺さっていた。
様々な種類が詰められていた茶葉は一つ一つ丁寧にラベンダー色のリボンで包装されていて、ロビーのソファにあけてみるとそれはまるで福袋みたいで、少しだけ時期外れなことに笑った。

「あれ、翔ちゃん。こんなところでどうしたんですか?」
ちょうど同じように隣のスタジオにいたらしい那月に見つかり、経緯を説明する。
「んで、藍に押しつけられたんだけどよ。」
「そうだったんですね~。…ああ、これローズマリーですねえ。」
「…ローズマリー?」
「ハーブの一種ですよ。ローズマリーのお茶は記憶力にもいいんですよ。」
「へえ。…ああ、んじゃあこの一本だけ入ってた花の名前もわかるか?花つっても初めて見たんだけどよ。」
「それがローズマリーですよお。」
「よく知ってるな、那月。」
「実家でたくさん育ててましたからね。
それとたしか、ローズマリー花言葉って【記憶】【思い出】、とそれから―――――

にっこりと微笑んだ那月は俺の気持ちさえ全てを知ってるんじゃないかとすら思えるぐらいで。
走りだそうとする俺の背中を優しく押した。
「ありがとな、那月。」
「いえいえ、翔ちゃんのお役に立ててよかったです!」
スタッフさんたちへの挨拶もそこそこに、次の仕事へ向かうために事務所を出る。
はやる気持ちは仕方がないが、ありがたいことに次の仕事も詰まっている。

*

「くそう、仕事押しちまったぜ…」
最後の仕事が押しに押したせいで寮についたのはもう外が闇に覆われてから、
かなりの時間が経ってからだった。
それでもそのまま藍の部屋に向かう。
昼間の紙袋を片手に持って。

ピンポーン
「…はい。」
「…俺だ、けど。翔。」
「フッ、見ればわかる。…開いてる。」
「お、おう。」
嫌ってほど余裕たっぷりなところに少しだけ、心が折れそうになったけど。
それでも一世一代男来栖翔、やる時はやんねえと。


「どうしたのショウ。っていうかいま何時だか分かってる?」
「お、おう。…悪ぃな。」
部屋着に着替えた藍はマスターコース時代、散々見てきたはずなのに。
今日はどうしてか落ちつかない。
仕事中だったのかリビングの机の上には綺麗に積み上げられた台本や譜面、開かれたノートパソコン。
仕事から直行することばかりを考えていたせいで、気付けばもう夜中と言っても良い時間だ。
「…最後の仕事が押しちまってさ。」
「そ、う。」
口から出てくるのはどんどん言い訳がましい弁解のような言葉ばかり。
それじゃあまずいと口を閉じれば。
沈黙が、気まずい。

「…なあ!」
「っ…なに、突然大声出して。」
突然だした大きな声にビクリと震えた華奢な肩。
俺は、何をしにきたんだ。
自分に問いかければ、聞かなくてもその答えは一つ。

「お茶、淹れてくれよ。…俺こういうシャレたやつとかよくわかんねえし。」
「どれ…?」
「これ。お前が昼間くれたやつ。“ローズマリー”だっけか。那月が教えてくれたよ。」
「わかった。貸して。」

グイッ
茶葉を受け取ろうと手を伸ばしてきた藍の腕を引き寄せる。
「ちょ、っと。ショウ!?」
「なあ。これ、さ。意味分かっててやったのか…?」
「なっ、意味なんて、別に。」
「顔、赤いぞ。藍」
「…っ。」
「俺は、嬉しかった。ちょっと、わかりにくいのはお前の照れ隠しだろ?」
「…知らない。」
「俺はもう、とうの昔からお前のこと、藍のことが好き、だ。」
「…とうの昔って、ボクがキミと出会ってからまだ数年だけど。」
「っだあ。言葉の綾だよ、あ・や!…で、お前はどうなんだよ。藍」
「…ボク、も。」
「ったく、素直じゃないんだから。」
思わず零れた笑みは、安堵と緊張の途切れと、君のいじらしさに。




ローズマリー花言葉は――――――――― “私を思って”


「…にしてもすごい量だな。」
カモミール、アップルミント、ラベンダー、ローズ…みんな身体に良いから。」
「へえ、そうなのか。こんなに量よく集めたな。」
「・・そう?カミュや那月に教えてもらった。」
「ああ。…あっ!良いネタもらいっ!ツイッターツイッターっと。」
まさかこんなに早く、小さなココロの声が届くだなんて思ってなかったけれど。
それでも隣にいる彼が幸せそうに笑顔を向けてくれるから。
ボクはキミの腕の中で、微笑める。
胸があたたかいのは、きっと手の中のお茶のせいではないだろうから。

「“藍にしちゃ珍しいな(笑)”っと。な?」
「…ショウ、顔がゆるんでるよ。」
「なっ。仕方ねえじゃねえか。お前にやっとこう、好きだ、って言えたわけだし…。」
「っ…。」
「お、おい藍大丈夫か?オーバーヒートすんなよ…!?」


(本当は全部、いつも頑張るキミのため、って言ったらキミはどんな顔をするんだろうか。)

 

 

小さな花とぼくのきもち

(言ってなんてあげないけど、ね。)