ほしぞら1/2

ぽつぽつ書いている二次創作小説たち。ジャンルごった煮。Twitter@bbb_kzs

【時依】瞳の中に映すもの

おかげさまで沼にどっぷりです。依都さんキャラ迷子。

ダイナー沼にハメてくれたゆえちゃんに捧げます、

お誕生日おめでとう!

 

2014.12.03.

 

 

こちらをちらりとも見ないままひたすらに優の話をする依都を視界の端に捉えながら、時明は昨日買った雑誌をめくり煎れたばかりのコーヒーを啜った。ゆったりとした、それでいてやや気怠げな空気が流れるこの朝を時明は嫌いじゃなかった。

たったひとつを除けば。

 

「YUUがさあ〜〜なあ。…なあってば、ときはる。」
「ん?なに?」
「…お前、聞こえてるなら返事しろよ〜。」
あ、やっと入ったか。呆れたように細められた鶯色の瞳に自分が映ったのを確認して、時明は少しだけ優越感に浸る。

お互い仕事やライブ中はファンのクレドみんなのYORITOとTOKIHARUでも、いつもこの瞬間だけは依都は時明しかみていないから。

「んー、だってよりと呼んでくれないでしょ、名前。」
「…あれ、ときはる拗ねてた?」
一瞬の間を空けて依都が驚いたように目を丸くする、時明がわかるぐらいほんの少しだけわざとらしく。

「うーん、拗ねたって言ったらどうしてくれるの?」
「とびっきりの愛を与えてやるよ?」
「ぷはっ、なんで疑問系?」
「…いーじゃん。」
「ふーん、じゃあお言葉に甘えて?」
「…ときはるこそ疑問系だろ。」
「よりとに合わせてみただけだよ。…で、何をしてくれるのかな?」

少しだけ不服そうな依都に時明は思わず自分の頬が少しずつゆるんでいるのがわかった。
「…っ、夜覚悟しとけよ。」
「それはこっちのセリフだと思うけど?まぁ、楽しみにしておくよ。」
「……ほんと食えねえよな、ときはるって。」
「ありがとう?」
「褒めてねえよ。」
心底呆れたと言わんばかりの表情を見せる依都に言葉を返せば、時明はどうしようもないと肩を竦められた。
「そう?まぁその前に仕事はちゃんと頑張ってよ、雑誌のインタビューとDVD収録。」
「当たり前。」
「YUUとかにちょっかい出し過ぎないように。こないだもそれで大変なことになったんだから。」
「…あれはゆうも悪りぃだろ。」
「YORITO。」
「…ったく。はいはいちゃんとわかってるよ。TOKIHARUさん。」
時明が仕事モードに入ったのを察するのはバンド内で一番依都が疎そうでいて早い。
それはプライベートでも同じことなのか、一瞬だけ時明の表情が変わったのを見逃さないのはさすがと言うべきか。
「うん、よろしく。」
「ほんと食えねえ。」
「そういうところも好き、なんでしょ?」
「…はいはい、そーですよ。好きですよ。」
「珍しく素直だね。」
「ふん、どっかのだれかさんが素直じゃねぇからな。」
「誰のことだろうねぇ。」
「すっとぼけんのかよ…。」
「さあねえ。……ま、俺も愛してるよ、よりと?」
「………んなの知ってるよ。」
くすりと笑った時明に一瞬理解が追いつかなかずぶっきらぼうに返した依都の顔が徐々に朱色に染められていくのを見て、時明は今度こそ優越感に心が満たされていくのを感じ、ぬるくなったコーヒーを一気に呷った。